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- でも、どこからも反応なし。それもそのはず。このタクシーの乗客は私ひとりなんですもの。私は医者ではないわ。ということは、運転手さんはこのまま……? ああ、どうして私は、容姿端麗で金持ちで、なに不自由のない幸福で恵まれた穏やかな生活を送っているのに、こんなに気の毒なんでしょう。私は、一生あの話を最後まで聞けないのね。
- 悲しみに打ちひしがれる私は、タクシーの窓の外に目をやるの。ながれ去る秋の木々。クラクションを鳴らしてすれ違っていく自動車。目を見開いてこっちを見ている通行人……。あらやだ! タクシーはまだ走ってるわ!
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